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不動産投資コンサルティングの現場から 第22回
「CFネッツさんは投資家を沢山抱えているから、その中で買える方いませんか?」
というのは、全国の個人投資家を抱える我々に対して、売却物件を預かった場合、
最初に聞かれることの多い質問ではある。
売れるものならそうしたいが、投資分析に落とし込んだり相場に照らし合わせると、
どうしても買い依頼を受けている自分のクライアントに紹介できる案件ではなくな
ってしまう。
「弊社のクライアントに買って頂く金額としては、最低でも9000万円を割って頂か
ないと難しいと思います。そうすると今なら一般市場で売りに出した方が、より高く
売れると思いますよ」
「そうですかぁ・・・。分かりました。では進めて下さい。必要書類あったら言って
ください」
つづく
不動産投資コンサルティングの現場から 第23回
正式に売却の媒介依頼を受けたため、不動産の広告である販売図面を作成し、業者間の
不動産流通オンライン情報サイトであるレインズへ登録する作業へ入る。今回の売主が
購入された当時の販売図面を参考に作成していると、載っている価格とのギャップに少
しだけ複雑な感覚になってしまう。
小山から貰った入居者一覧をもとに、現在の入居者から徴収している賃料、賃貸借契約内容に期間、敷金の額なんかを販売図面にも落とし込む。
レインズへの登録早々、各業者のルーチンワーク化している新規登録物件チェックを経て、この情報を見た色々な不動産業者から問い合わせが続く。聞かれる事は大体決まっていて、
こちら側が買主であれば当然知りたいことがほとんどだ。
入居状況に、固定資産税などの運営費はいくらなのか、そして指値は効きそうなのか。
その辺りを聞かれる事が多い。中には、自社で広告費用を負担するから、エンドユーザ
―向けの収益物件検索サイトへの登録依頼をしてくる業者もいる。このような業者の中
には、勝手に値段を下げたうえで広告された過去もあった・・・。
都内の業者からの問い合わせもあれば、物件が所在する地元の業者からの問い合わせも
ある中、やはり地元の業者は場所に精通していて、「あの場所なら、これくらいの値段が
妥当だよ」と、電話越しで指値交渉してくるケースが多かった。
「小山さん、もう売却開始してますので、引き続きAP管理会社との引き継ぎお願いします
ね」
「そうね、でも本当は一度きっちり引き継ぎが完了してからの売却スタートの方が良かったんじゃないの」
「出来ればそれが一番こちらも楽ですけどね。でも埒が明かないので、売却での所有者
変更でAP管理会社には無理やり管理替えのスピードに対応してもらうしかないですよ。
不透明なところがある事は、購入検討者にも伝えますので」
売却開始から数週間が過ぎ、あと1週間でGW休暇を迎えようとしてた頃。
一本の電話が入った。
つづく
不動産コンサルティングの現場から 第24回
今回、販売開始をした物件の、近所の業者からの問い合わせだった。
この世界では珍しく女性の営業マンからの電話だったので、数週間前にも同じ人物
から確認の電話があったことを思い出す。
地元で営業を行っているらしい、TK不動産の相馬と名乗るその女性の声は、やや
ハスキーボイスで、一度聞いたら忘れない特徴的な声をしていた。
「あのぉ、固定資産税と月々の維持費が知りたいんですけど・・・。ちなみに、問合
わせって結構ありますか」
「まだ販売中か」、「資料下さい」的な確認の電話を女性から貰うことはあっても、応対
する限り、それはおそらく事務の方からであって、一つでも多くの情報をこちらから
聞き出そうとする姿勢から、この人は営業マンなんだと推測させられる。
「問い合わせは結構頂きますけど、具体的に買付とまでは至ってないですね。それと、
現行のAP管理会社からウチの管理に引き継いでいる最中で、まだ不透明な部分が結構
ありまして、維持費なんかは教えて貰えていないんですよ」
「・・・・」
沈黙が長い。どうも、この女性の営業マンの他にも、横でこちらの話を聞いている人間
がいる様子だった。上司か、先輩営業マンか、おそらくその人間に相談しながら、次に
こちらに投げてくる問い掛けを決めようとしている状況だったのだろう。
「・・・。いくらまで値段交渉ききますか?」
きたか、という気持ちになる。電話の向こうでは、何やらブツブツ指示が続いていた。
つづく