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不動産コンサルティングの現場から 第37回
「小山さん、CAマンションなんですけど無事に決済できることになったので、管理
の引き継ぎをTK不動産の方とやって欲しいんですよね」
「おぉ、ついに決済なんだ。引渡し前に、れいの雨漏り被害のあった部屋の修繕も
やらなきゃいけないしね。買主さん側の新規管理会社はTK不動産になるんだよね?
それなら、入居者に『所有者変更の通知書』も出すだろうから、その書式も確認し
あわなきゃね」
事業用不動産の場合、円滑にオーナーチェンジを進めるために「この度、このような理由で所有者が変更なりましたので、家賃の振込口座が変更になります」といった趣旨の書類を各入居者に送付することになる。
「そうですね、すいませんが直接打合せして貰っていいですか?先方にはもう伝えちゃいました。色々と他にも知りたい事もあるみたいだったんで」
「わかったわよ、了解。そうしたら一度連絡とってみるね。あわせて、いい加減にAP 管理会社にも情報開示させないとね」
「はい、宜しくお願いします」
そうして無事に決済に向けて走り出したはずだった。
翌日、小山から携帯に電話が入る。
「ちょっと、ややこしいことになりそうよ」
つづく
不動産コンサルティングの現場から 第38回
冒頭から「ややこしいことになりそう」だなんて、少々脅かしトークが好きな小山の口調を差し引いても、その話し方からは深刻さが伝わってきた。
「ん、どうかしましたか」
「それがさぁ、今になってAP管理会社から『滞納者がいる』って連絡が入ってきたのよ。それがどうも複数あるみたいだから、一筋縄じゃいかない感じよ」
滞納者がいる、しかも複数。これは買主側には伝えなければいけない。
「その部屋番号とか、滞納の状況とか詳しく分かりますか。遅延気味なのか、それとも全く支払っていないのかとか含めて」
「うん、ちょっとAP管理会社に確認させてる。ちなみに明日、管理の引継ぎ打合せにTK不動産の相馬さん来るんだよね」
「そうですか、TK不動産さんには伝えてましたけど、うちがきちんと引継げていないのものを、引き継ぐというのも何だか非常に難しい感じですね。あわせて、その滞納の話はうちも知らなかったとは言え、間違いなく一悶着起きますよね」
「とりあえず、うちが把握している情報、持っている資料は全て開示するつもりよ」
「先約あって、そのTK不動産との打合せには同席できないんで、滞納の件は今日中に連絡入れようと思います」
「そうね・・・」
つづく
不動産コンサルティングの現場から 第39回
「はぁ?なんですか、それ」
ある程度予想はしていたものの、思っていたより厳しい口調で返してくる。
「数名の賃料遅延者が判明し、その詳細を調査中」という判明した事実を伝えた。
「そうなんですよ、うちもびっくりで」
「ちょっと社長に相談してから、また連絡いれます。いずれにせよ、明日そちらの
小山さんとお会いしますんで、その時詳細教えてもらいますけどね」
ガチャリと電話が切られると、この後に控えるいくつかの交渉事が目に浮かび、明らか
にスムーズな取引のレールからは外れてしまったことがよく理解できた。
つづく
不動産コンサルティングの現場から 第39回
「いま電話大丈夫?」
翌日、TK不動産の相馬さんとの打合せが終わったらしく、小山から連絡が入る。
声のトーンから何かあったことだけは伺い知れた。
「大丈夫ですよ、どうでしたか」
「どうもこうも、私もこの業界で男社会の中で生きてきたから、女だけどタフな方と
思ってたけど、あの人も相当タフだよ。というか男だね。『ふざけんじゃないわよ』っ
て何回言われた事か・・・。取りあえずうちの知っている現時点での情報は全て開示
したけど、やっぱり賃料遅延気味の部屋については納得されてないわよね。AP管理会
社も交えて打合せしたいけど、そこも非協力的だし」
「そうですか、了解しました」
「とりあえず自分の方から電話入れて、一度お会いしてこようと思います」
「そうね。でも、一筋縄じゃ行かないと思うわよ」
「でしょうね」
つづく