2011年01月11日
不動産投資コンサルティングの現場から 第37~39回
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不動産コンサルティングの現場から 第37回
「小山さん、CAマンションなんですけど無事に決済できることになったので、管理
の引き継ぎをTK不動産の方とやって欲しいんですよね」
「おぉ、ついに決済なんだ。引渡し前に、れいの雨漏り被害のあった部屋の修繕も
やらなきゃいけないしね。買主さん側の新規管理会社はTK不動産になるんだよね?
それなら、入居者に『所有者変更の通知書』も出すだろうから、その書式も確認し
あわなきゃね」
事業用不動産の場合、円滑にオーナーチェンジを進めるために「この度、このような理由で所有者が変更なりましたので、家賃の振込口座が変更になります」といった趣旨の書類を各入居者に送付することになる。
「そうですね、すいませんが直接打合せして貰っていいですか?先方にはもう伝えちゃいました。色々と他にも知りたい事もあるみたいだったんで」
「わかったわよ、了解。そうしたら一度連絡とってみるね。あわせて、いい加減にAP 管理会社にも情報開示させないとね」
「はい、宜しくお願いします」
そうして無事に決済に向けて走り出したはずだった。
翌日、小山から携帯に電話が入る。
「ちょっと、ややこしいことになりそうよ」
つづく
不動産コンサルティングの現場から 第38回
冒頭から「ややこしいことになりそう」だなんて、少々脅かしトークが好きな小山の口調を差し引いても、その話し方からは深刻さが伝わってきた。
「ん、どうかしましたか」
「それがさぁ、今になってAP管理会社から『滞納者がいる』って連絡が入ってきたのよ。それがどうも複数あるみたいだから、一筋縄じゃいかない感じよ」
滞納者がいる、しかも複数。これは買主側には伝えなければいけない。
「その部屋番号とか、滞納の状況とか詳しく分かりますか。遅延気味なのか、それとも全く支払っていないのかとか含めて」
「うん、ちょっとAP管理会社に確認させてる。ちなみに明日、管理の引継ぎ打合せにTK不動産の相馬さん来るんだよね」
「そうですか、TK不動産さんには伝えてましたけど、うちがきちんと引継げていないのものを、引き継ぐというのも何だか非常に難しい感じですね。あわせて、その滞納の話はうちも知らなかったとは言え、間違いなく一悶着起きますよね」
「とりあえず、うちが把握している情報、持っている資料は全て開示するつもりよ」
「先約あって、そのTK不動産との打合せには同席できないんで、滞納の件は今日中に連絡入れようと思います」
「そうね・・・」
つづく
不動産コンサルティングの現場から 第39回
「はぁ?なんですか、それ」
ある程度予想はしていたものの、思っていたより厳しい口調で返してくる。
「数名の賃料遅延者が判明し、その詳細を調査中」という判明した事実を伝えた。
「そうなんですよ、うちもびっくりで」
「ちょっと社長に相談してから、また連絡いれます。いずれにせよ、明日そちらの
小山さんとお会いしますんで、その時詳細教えてもらいますけどね」
ガチャリと電話が切られると、この後に控えるいくつかの交渉事が目に浮かび、明らか
にスムーズな取引のレールからは外れてしまったことがよく理解できた。
つづく
不動産コンサルティングの現場から 第39回
「いま電話大丈夫?」
翌日、TK不動産の相馬さんとの打合せが終わったらしく、小山から連絡が入る。
声のトーンから何かあったことだけは伺い知れた。
「大丈夫ですよ、どうでしたか」
「どうもこうも、私もこの業界で男社会の中で生きてきたから、女だけどタフな方と
思ってたけど、あの人も相当タフだよ。というか男だね。『ふざけんじゃないわよ』っ
て何回言われた事か・・・。取りあえずうちの知っている現時点での情報は全て開示
したけど、やっぱり賃料遅延気味の部屋については納得されてないわよね。AP管理会
社も交えて打合せしたいけど、そこも非協力的だし」
「そうですか、了解しました」
「とりあえず自分の方から電話入れて、一度お会いしてこようと思います」
「そうね。でも、一筋縄じゃ行かないと思うわよ」
「でしょうね」
つづく
Posted by 中元 崇 at 00:01│Comments(0)
│不動産投資の話